依頼者は自営業を営んでおり、若い頃から仕事に明け暮れる日々を送っていたという。それがこの歳になり、やっと仕事も一段落つきこれまでの人生を振り返ってみた時、中学校時代に級友から言われたある言葉を思い出したのが調査のきっかけである。ただその言葉をこれまでにも何度となく思い出しはしたのだそうだが、「仕事に追われる毎日から昔の感傷に浸っている余裕はありませんでした。ですがどうしても元気なうちにもう一度、その言葉を自分に掛けてくれた級友と会いたいんです。」と語る、白髪交じりの男性の昔を懐かしむ表情が印象的だった。
調査は依頼者のクラスメートだった男性を見つけ出すことである。しかしながら、何せ時が経過し過ぎていることや情報が乏しいことなどから、調査は予想以上に難航した。それでもやっとのことで当人を見つけ出すことに成功した。
その後しばらくして依頼者から一通の手紙が届いた。手紙の内容によると依頼者とその男性は再会を果たすことができたのだが、男性は重い病を患っていたそうだ。それでも「俺たちは白髪頭になってもずっと友達だぞ。」という言葉があったからこそ、何十年経っても二人はもう一度友人として再会することができたのだろうし、このタイミングで依頼者が調査を決断していなければ、その後二人が再会を果たせたかどうかはわからない。